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ココは少し難しいお話。今まで“遺伝子”とか“DNA”とかそれを使った実験の仕方などを簡単に説明してきたけど、ココで説明する“遺伝子治療”とはそれらの集大成なんだ。
技術の進歩でいろんな遺伝子の働きが分かるようになると同時に、私たちの遺伝子の診断もできるようになった。これにより遺伝子の異常による病気、“遺伝子疾患”を治療することができるようになるかもしれないんだ。
“遺伝子疾患”とは生れる前から親の遺伝子に異常があり、それが子供に遺伝する事や、生れてから紫外線や放射線で遺伝子が傷つきガンになったりすることも含まれる。
いずれにせよ、遺伝子がタンパク質を作る命令を出しているのは説明したと思うけど、この遺伝子が壊れていると必要なタンパク質を作らなくなってしまったり、逆に必要以上にタンパク質を作り出してしまったりするんです。これが遺伝子疾患。
遺伝子治療とはこれらの遺伝子の異常を正常な遺伝子に変えて根本的に治療しようとするものなんだ。
これにより、今までの薬で治らなかった病気や、手術をしないと治らなかった病気なんかが直せる事ができるかもしれないんだ。

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プラスミドを使って遺伝子実験をする時にプラスミドを切るんだけど、どうやって切るか?
大腸菌の大きさは “約1μm(マイクロ㍍)”。簡単に言うと髪の毛の1/100の大きさだそうな。だからプラスミドはさらにそれより小さい!こんなに小さいとミクロイドS(古すぎ?)にお願いしてもムリ!・・・そこで登場するのが“制限酵素”なるものなんです。
制限酵素にはいろんな種類があって、それぞれ特定の“塩基配列を認識”して切ってくれる優れものなのです。小生は根っからの文系ですのでコレは目からウロコでした。
おまけにもう一つ目からウロコが。切る酵素があればくっつける“DNAリガーゼ”なる酵素がある!切られっぱなしではなく、捨てる神あれば拾う神あり、切る酵素あればつなぐ酵素ありなんです。
左の図のように制限酵素が仲良しアデニン君とチミン君、グアニン君とシトシン君の仲を無残にも引き裂き、そしてDNAリガーゼが慈悲深く再びくっつけるのでありました。めでたしめでたし・・・。
実際の実験としては切りたい部位の配列を認識する制限酵素でプラスミドを切る。そして挿入したい遺伝子をDNAリガーゼでくっつける・・・そうなんですが、細かく説明すると難しいのでこの辺にしておきます。
こうして組み換えられたプラスミドDNAが出来上がり大腸菌の中に挿入され・・・(「プラスミドとは」で説明しているので略)、薬やタンパクを発言する重要な役割を果たすわけです。

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私たち人間にはDNAが染色体にしか存在しませんが、大腸菌とかの細菌には“プラスミド”という染色体とは別のDNAが存在します。
これが不思議なDNAで細菌の体内で増えたり、体分裂のときプラスミドのDNAもそれぞれに受け継がれていくんです。
で、遺伝子の実験では、この便利な機能を利用してよくプラスミドが使われるんです。
プラスミドは輪のような形をしていて、これを“制限酵素”(「制限酵素とは」で説明)で切って別の遺伝子を挿入する。
それを今度は“大腸菌”に挿入して、その大腸菌を“培養”して大腸菌を増やすとプラスミドも一緒に増える。で、最後にその大腸菌からプラスミドを取り出せば・・・ガンのお薬になったりワクチンになったり、あるいはこのプラスミドがタンパク質を作ってくれて、そのタンパク質を薬とかに利用したりと便利なDNAなんです。
ところで、大腸菌と言うと“病原性大腸菌”とか、特に有名なのがO(オー)157がありますね。「そんなコワイ細菌を使って大丈夫なの?」でもご心配なく。大腸菌には“株”と言われる家系のようなものがあり、有害な大腸菌もあれば無害の大腸菌もあるんです。
実験には害のない大腸菌を使い、さらにプラスミドDNAを組み換えた大腸菌が外界(私たちが普段生活している場)に出ないように実験装置の中や密閉された部屋の中で実験をするように決められているんだ。

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“タンパク質”とは一言で言うとアミノ酸がいっぱいくっついた化合物。
アミノ酸の分子が少ないと“ペプチド”って呼ばれてアミノ酸の分子が多いとタンパク質って呼ばれるんだって。でもどこまでがペプチドでどこからがタンパク質って言う事は決まってないらしい・・・てーげーですね(沖縄の言葉で「適当ですね」)。
でももっと簡単に言えば“体の素”ですね。基礎としての「基」というよりは、やはり体を作っている原料としての「素」って感じですね。アミノ酸がタンパク質の素で、タンパク質が体の素って事ですね。
なぜなら骨格的な部分で見ると筋肉や余分な贅肉、髪の毛から爪の先までタンパク質。機能的な部分で見ると食べ物を食べておいしいとか甘いとか辛いとかって言う刺激を伝達する“酵素”と言うのもタンパク質の一種。それとか風邪をひいたときに体の中で戦ってくれる抗体もタンパク質・・・う~んタンパク質の仕事は奥が深い! それもそのはずタンパク質の種類はなんと数千万種類!!!なぜなら「コドンとは」でも説明したけどアミノ酸の種類はたった20種類なんだけどアミノ酸が2個つながった組み合わせは400通り、3つだといきなり8,000通り、4つだと160,000通り、5つだと・・・と言う感じにタンパク質にはスゴイ種類がある。
それらが体のいろんなところでいろんな仕事をしてくれてるんだ。すごいですねー。生命の神秘ですねー。

でも最近ウチの社長の髪の毛を作るタンパク質・・・
DNAが眠ってしまっているんでしょうか・・・(涙)。 
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ウルトラマンの怪獣みたいな名前ですが、「塩基とは」で説明したATGCがいろんな組み合わせで3つずつ仲良くお仕事をする単位が“コドン”です。 
                         
いろんな組み合わせと書きましたが、コドンの組み合わせは4×4×4の64通り!でも実際には20種類のアミノ酸にしか対応してないんだって。そして体内で作ることができないアミノ酸を“必須アミノ酸”と言います。だからよい子はいろんなものを好き嫌いなく食べないとだめと言うことですね。
このコドンが細胞の核の中で“メッセンジャーRNA(mRNA)”に写し取られて核の外に出ます。そしたら今度核の外の細胞質で待ち構えているのが“リボソーム”なる“翻訳装置”。ここで翻訳された指示通りに“トランスファーRNA(tRNA)”がアミノ酸を連れてきて、アミノ酸が次から次へとガッチャンコガッチャンコつながってタンパク質になるんです。
『燃焼系燃焼系ア~ミノ式―♪』なる飲料のCMがありましたが、アミノ酸とは簡単に説明すると・・・簡単に説明できないのでやめます。  ひと言で言うならば“タンパク質の素(もと)”ですね。素で思い出しましたが、「味の素」もアミノ酸です。

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“塩基”とは・・・その前に「遺伝子とは」のところでDNAの説明をしたと思うけど、塩基とはこのDNAを構成している“物質のひとつ”のこと。
塩基には左の図にあるように“A(アデニン)”・“T(チミン)”・“G(グアニン)”・“C(シトシン)”の4種類があって、これらの“塩基”と“リン酸”と“糖”が1分子ずつ結びついたものが“DNAの基本単位”なんです。
ちなみにこれを“ヌクレオチド”と呼びます。
アデニン(A)とチミン(T)はとっても仲良し、グアニン(G)とシトシン(C)はとっても仲良しなので、必ず“AとT”、”GとC”のペアを作るんだ。
これには分子の大きさや水素結合の数だとか・・・いろんな理屈があるんだけど、とにかくATとGCが仲良しだと言うことを覚えて下さいね。
で、このATとGCの仲良しコンビが手をつないで「はしご」のように何段にも連なって遺伝の情報である“遺伝子”を形成しているんだ。   

さらに、左の図にあるように隣り合った3つの塩基がこれも仲良しで、これを“コドン”と呼びます。次の「コドンとは」で説明するけれど、いろいろな組み合わせの塩基でできたコドンがいろいろな“アミノ酸”を意味しているんだ。で、そのアミノ酸がさらにアミノ酸とくっついて“タンパク質”となり、元気に生活ができる栄養源も作り出しているんです。
ちなみに左の図の一番下の“ウラシル(U)”は“RNA”の塩基で「コドンとは」で説明するけど、アミノ酸を結合する時DNAの塩基のアデニン(A)と仲良く働くんだ。忘れないで下さいね。                

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人間や動物、植物・・・生きるもの全てに細胞と言う小さな部屋が無数にあり、この細胞の中に“遺伝子”は存在します。
そもそも“遺伝子”や“DNA”はたまた“ゲノム”とは何でしょうか?
まず、“DNA”とは次の「塩基とは」で説明する“塩基”と“リン酸”と“糖”がくっついた分子が“DNA”。“遺伝子”とは特定の物質や部位をさすのではなく、“遺伝する単位としての概念”で、DNAが数百から数万文字のかたまりとなり、「鼻を高く」とか「目を大きく」とか親から受け継ぐまさに遺伝の情報なのです。
で、もう一つ“染色体”なる言葉がありますが、これは“ヒストン”と呼ばれるタンパク質分子にDNA分子が巻き付いたものが折りたたまれて“染色体”という名前のかたまりになってるんです。
ヒトなら46本、チンパンジーは48本、玉ねぎは16本だけどサツマイモは90本・・・動物だから植物だからとかその数にはあまり関係ないんですね。
で、最後に“ゲノム”。ゲノムとは遺伝子全体のことで、ヒトにはゲノムを構成するDNAが約30億塩基対あることが分かっています。

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